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古書店で、公衆電話で、深夜のタクシーで――。
同時代人の息遣いを伝えるエピソードの連鎖が、極上の短篇小説を思わせるエッセイ15篇。
古書店で手にした一冊の本に書き込まれていた言葉。公衆電話で演じられた人生の一場。深夜にタクシー・ドライバーと交わした奇妙な会話。
……エピソードの断片はさらなるエピソードを呼び寄せ、あたかもチェーン・スモークのように連鎖しながらひとつの世界を形づくる――。同時代人への濃やかな共感とともに都会の息遣いを伝え、極上の短編小説を思わせる味わいのエッセイ15篇。
【目次】
鳥でもなく魚でもなく
逆転、逆転、また逆転
老いすぎて
タクシー・ドライバー 東京篇
君だけが知っている
わたしに似た人
メランコリーの妙薬
走らない男
アフリカ大使館を探せ
赤や緑や青や黄や
ナセルとマリリン
信じられない
消えた言葉
シナイの国からの亡命者
懐かしむには早すぎる
沢木 耕太郎
1947(昭和22)年、東京生れ。横浜国大卒業。
ほどなくルポライターとして出発し、鮮烈な感性と斬新な文体で注目を集める。『若き実力者たち』『敗れざる者たち』等を発表した後、1979年、『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、1982年には『一瞬の夏』で新田次郎文学賞を受賞。常にノンフィクションの新たな可能性を追求し続け、1995(平成7)年、檀一雄未亡人の一人称話法に徹した『檀』を発表。
2000年に初めての書き下ろし長編小説『血の味』を刊行。2002年から2004年にかけて、それまでのノンフィクション分野の仕事の集大成『沢木耕太郎ノンフィクション』が刊行され、2005年にはフィクション/ノンフィクションの垣根を超えたとも言うべき登山の極限状態を描いた『凍』を発表、大きな話題を呼んだ。