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今から三十年以上前、小学校帰りに通った喫茶店。
店の隅にはコーヒー豆の大樽があり、そこがわたしの特等席だった。
常連客は、樽に座るわたしに「タタン」とあだ名を付けた老小説家、歌舞伎役者の卵、謎の生物学者に無口な学生とクセ者揃い。
学校が苦手で友達もいなかった少女時代、大人に混ざって聞いた話には沢山の“本当”と“嘘”があって…懐かしさと温かな驚きに包まれる喫茶店物語。
中島京子
1964(昭和39)年東京都生れ。東京女子大学文理学部史学科卒。出版社勤務を経て渡米。
帰国後の2003(平成15)年『FUTON』で小説家デビュー。
’10年『小さいおうち』で直木賞、’14年『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞、’15年『かたづの!』で河合隼雄物語賞、歴史時代作家クラブ作品賞、柴田錬三郎賞、同年『長いお別れ』で中央公論文芸賞、’16年日本医療小説大賞を受賞した。