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家族と共にフランス・パリの郊外フォンテーヌブローに移住した著者は、18世紀の家に住み、朝市の食材の豊かさに驚嘆。高校生のデモの明快な意思表示に民主主義の本来の姿を見、ローマ法王の訃報に接し信仰の意味について考えを巡らせる。
「その土地を拠点としてものが見えること、世界のからくりがわかること、が大事なのだ」。
異国の客として暮らす日々の発見と、しなやかで豊かな思索のクロニクル。
目次
始まりの日々
空港、町の景観、車
個人と社会
黄色い空、学校、宣言
広場、古道具屋、ティタンとスカーフ
川の風景、マニフ、記憶論とチベット
雪と春、ヨーロッパの記憶装置、三人の少年
高校生、法王の死、シャルトルと須賀敦子
アスパラガスと茸、ベルリンの記念碑、ヨブの妻
緯度と夜、EU憲法、フロランスとフセインの帰還
池澤夏樹
1945年帯広市生まれ。埼玉大学理学部物理学科中退。
75年より3年ギリシャに暮らす。88年『スティル・ライフ』で第98回芥川賞受賞。2004年『イラクの小さな橋を渡って』『憲法なんて知らないよ』『静かな大地』などの著作活動全般について第7回司馬遼太郎賞受賞。