Detail
魂の専門家のもとへ脳科学の申し子が訪れた。夢と無意識、心理療法と科学、そして箱庭。
「人間の不思議」を真摯に語り合った3日間。
人間の不思議を、「心」と「脳」で考える──魂の専門家である碩学と脳科学の申し子が心を開いて語り合った3日間。京都の河合オフィスで茂木氏は自ら箱庭を作り、臨床心理学者はその意味を読む……。
箱庭を囲みながら、夢と無意識、シンクロニシティとは何かなどをめぐって、話は深く科学と人生の問題に及んでいった。「河合隼雄」という存在の面白さが縦横に展開する貴重な対話集。
【目次】
第一回:こころと脳の不思議
ユングは人間の何を見ようとしたか
学生時代の箱庭体験
安易に「言語化」することの怖さ
夢の意味を自分で考えてみる
心の盲点が夢に現れる
「気づき」の感覚を忘れた科学
「関係性」とは心のつながり
「愛は盲目」は脳科学的に正しい
「中心統合」の欧米、「中空均衡」の日本
「三年に一人、本物が出ればいい」
無用な決まりごとが多すぎる
「診断を下す」ことが患者を苦しめる
「私」とは「関係の総和」
変化という「可能性」に注目する
脳科学では心の一部分しか見えない
近代科学が排除してきたもの
ひとつの事例は普遍に通ずる
話を聞くだけで疲れてしまう人
人は極限で同じ心の動きをする
第二回:箱庭と夢と無意識
箱庭のなかの「生」と「死」
「わからない」ことを大事にする
ニワトリが牛耳る不思議な世界
箱庭をして帰って行ったゴリラ
世界全体を見ている「誰か」
そのアイテムを選ばせる「無意識」
東洋人の箱庭には自然が多い
無意識をつかみ出すとっかかり
「シンクロ」はどうして起こるか
非因果的連関をおもしろがる
因果のしがらみを解きほぐす
箱庭で体験するシンクロニシティ
世の中を縦糸と横糸で見てみる
関係性でのみ成り立つ確実性
科学主義との果てしない戦い
箱庭をしているときの脳活動
科学と「人生」との乖離
身の上話に夢中になる運転手
「運命の人」も文脈のせい
第三回「:魂」を救う対話
脳治療の倫理的課題
脳科学に限界はあるか
夢のなかで「意味」がつながるとき
自己矛盾を解決するための装置
言語に依存しすぎの現代人
相手の苦しみを正面から受け止める
「中心をはずさずに」
相づちの達人
相手の「魂」だけを見つめる
治療が必要かどうかの見きわめ
「偶然」というものを大事にする
何年も経って意味がわかる夢
全体に、平等に注意力を向ける
数学から心理学の世界へ
脳科学の「科学的真実」への疑問
現代人の不安の根本原因
「関係性」を扱う科学は生まれるか
答えを与えるより、悩みを共有する
「わかった気になる」落とし穴
解説:河合俊雄
河合隼雄(1928-2007)
兵庫県生れ。京大理学部卒。京大教授。日本におけるユング派心理学の第一人者であり、臨床心理学者。文化功労者。文化庁長官を務める。独自の視点から日本の文化や社会、日本人の精神構造を考察し続け、物語世界にも造詣が深かった。著書は『昔話と日本人の心』(大佛次郎賞)『明恵夢を生きる』(新潮学芸賞)『こころの処方箋』『猫だましい』『大人の友情』『心の扉を開く』『縦糸横糸』『泣き虫ハァちゃん』など多数。
茂木健一郎
1962(昭和37)年東京都生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学大学院物理学専攻課程を修了、理学博士。〈クオリア〉をキーワードとして、脳と心の関係を探究している。著書に『脳と仮想』『ひらめき脳』『生命と偶有性』など。『IKIGAI―日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣―』は、著者が英語で執筆した最初の書籍となる。