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過去に犯した罪をどのように裁き、どのように受け入れるか――。
数々の賛辞に迎えられて、ドイツでの刊行後5年間に25カ国で翻訳され、
アメリカでは200万部を超えるベストセラーに。
15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」──ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。
現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。
本文より
そのあとの何週間か、ぼくは本当にバカみたいに勉強し、進級試験に合格し、ハンナと愛し合った。まるで世界中見渡してもそれ以外に価値のあることはないみたいに。そのあとに起こったこと、当時すでにその兆候はあったものの、後になってようやく明るみに出た事柄を知っているために、こんなに悲しいのだろうか?
なぜだろう?どうして、かつてはすばらしかったできごとが、そこに醜い真実が隠されていたというだけで、回想の中でもずたずたにされてしまうのだろう。
ベルンハルト・シュリンク Schlink, Bernhard
1944年ドイツ生まれ。小説家、法律家。ハイデルベルク大学、ベルリン自由大学で法律を学び、ボン大学、フンボルト大学などで教鞭をとる。1987年、『ゼルプの裁き』(共著)で作家デビュー。1995年刊行の『朗読者』は世界的ベストセラーとなり2008年に映画化された(邦題『愛を読むひと』)。他の作品に『帰郷者』(2006)、『週末』(2008)、『夏の嘘』(2010)など。2017年6月現在、ベルリンおよびニューヨークに在住。
松永美穂
1958年生まれ。早稲田大学教授。著書に『誤解でございます』など、訳書にベルンハルト・シュリンク『朗読者』(毎日出版文化賞特別賞受賞)、ジークフリート・レンツ『黙祷の時間』、へルマン・へッセ『車輪の下で』、ペーター・シュタム『誰もいないホテルで』など。