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ある日、大きな画用紙に簡単な猫の絵を描いて飼い猫に見せた。するとすぐに絵に寄ってクンクンと匂いを嗅ぎだした。二次元の絵に本物と同じ反応を示す猫の不思議な認識。しかしそれは決して不思議なことではなく、動物が知覚している世界がその動物にとっての現実である。本書では、それら生物の世界観を紹介しつつ人間の認識論にも踏み込む。「全生物の上に君臨する客観的環境など存在しない。我々は認識できたものを積み上げて、それぞれに世界を構築しているだけだ」。著者はその認識を「イリュージョン」と名づけた。動物行動学の権威が著した、目からウロコが落ちる一冊。
目次
イリュージョンとは何か
ネコたちの認識する世界
ユクスキュルの環世界
木の葉と光
音と動きがつくる世界
人間の古典におけるイリュージョン
状況によるイリュージョンのちがい
科学に裏づけられたイリュージョン
知覚の枠と世界
人間の概念的イリュージョン
輪廻の「思想」
イリュージョンなしに世界は認識できない
われわれは何をしているのか
日高敏隆
1930年生まれ。東京大学理学部動物学科卒。
東京農工大学教授、京都大学教授、滋賀県立大学学長、総合地球環境学研究所所長を歴任。理学博士。