Detail
言葉は真夜中の星、
写真は光、絵はともしび、
デザインは夢。
そのガラスのドアを粉々に蹴とばしたいほどの怒りや、
何もかもが馬鹿らしくてもう誰にも会いたくない孤独や、
結局お金に体のすみずみまで操られているような束縛、
今日の嫉妬や、徒労や、臆病や、あきらめや、傲慢や、死が、
瞬時にひるがえって、表情をかえ、やさしくわたしにほほえみかける。
身を賭して言葉を書き、写真を撮り、絵を描き、デザインする人たちは、
そのほほえみをくれる。
「真夜中」のテーマは、文芸、アート、デザインと、ジャンルにとらわれず、
人間の想像力、表現のすばらしさと自由、現実に抗う力、
そして自分と自分をとりまく世界を変えようとする意志です。
ひとりひとりの心のうちは、いつもそのひとだけの秘密なのに、
一冊の本の中には、無数の結びつきがある。
あの部屋で本を読んでいたわたしは、今夜のあなた。
わたしの本のページを、遠くの誰かがいま、めくった。
この言葉のどこかに、あなたの言葉があり、
ページのどこかに、あなたが見るはずだった未知の風景が広がり、
ページのどこかが、あなたの感情と思考の痕跡でいろどられていく、
無数のあなたが織りなす、けれどたった一冊の本――。
これからそういう雑誌を作ります。
真夜中のページを、ひとりひとりの手のひらと指先で、灯してください。
Column[1] 夜間飛行 高山なおみ
Column[2] 伝わらない言葉 古川日出男
Column[3] 眠りの国 内田也哉子
Special 「本は真夜中の庭で」 Photography: 瀧本幹也
堀江敏幸 真夜中の庭に、ひとつの助詞を
連載小説 いしいしんじ 雪 第1回
連載 保坂和志 遠い触覚 第1回「いや、わかってますよ。」
連載 秦 早穂子 影の部分 第1回 羽子板/セリゾール街四番地
連載小説 伊佐山ひろ子 第1回 犬の時間
Essay[1] 松尾スズキ コント「真夜中の桃太郎さん」
Essay[2] 米沢亜衣 イタリア午餐回想
Essay[3] 伊藤 存 視覚の岸辺
Essay[4] 高野文子 マンガをかいててかんがえました
翻訳 小説は世界の彼方に 第1回〈沼野充義〉 マグダレーナ・トゥッリ「夢の町」
連載 eri 真夜中のドレス 第1回〈渡辺真起子〉
Photography: 今井智己
連載 大竹昭子 眼のエイリアンズ—90年代写真家の鼓動 第1回 佐内正史
連載 市川実和子 把手 第1回 小泉八雲—雑司ヶ谷
連作小説 小野正嗣 くだかれた生のかけら 第1回 ひだまりのなか
読み切り 福永 信 鴨川小景
連載 桐江キミコ 第1回 お尻のまつげ(Ass Lashes)—モモコのこと
読み切り 宮崎誉子 クレンジングサロン
Science 科学者からの手紙 第1回「宇宙」〈須藤 靖〉
連載 西平 直 巡礼としてのシュタイナー教育 第1回
Art 1 渡邉良重
連載 宇野邦一 思考の漂流物ABC…… 第1回 Aube/Bonheur/Crayon
連載 ECD 幸福の追求 第1回 未来の他者
連載小説 東 直子 甘い水 第1回
連載 北村道子 北村道子の人生指南 第1回
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連載 東野翠れん イスラエルに揺れる ペーラッフ 第1回
Art 2 高木紗恵子