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「私と別れても、逍ちゃんはきっと大丈夫ね」そう言って日和子は笑う、くすくすと。
笑うことと泣くことは似ているから。
結婚して十年、子供はいない。繊細で透明な文体が切り取る夫婦の情景―幸福と呼びたいような静かな日常、ふいによぎる影。
何かが起こる予感をはらみつつ、かぎりなく美しく、少し怖い十四の物語が展開する。
江國香織
1964年東京生まれ。87年「草之丞の話」で「小さな童話」大賞、
89年「409ラドクリフ」でフェミナ賞、92年『こうばしい日々』で坪田譲治文学賞、
『きらきらひかる』で紫式部文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、
04年『号泣する準備はできていた』で直木賞、07年『がらくた』で島清恋愛文学賞を受賞。絵本の翻訳も多い。