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書名どおり、日本各地で、山で生きる市井の人々の姿を活写した名作です。
もとは「渓流」(つり人社)に連載され、取材期間は10年にも及ぶものでした。
2002年、つり人社から単行本が刊行されると、各紙誌で絶賛されました。
著者の高桑信一氏は、登山を通して独自の視点で「山」を表現してきましたが、
本書ではそこで暮らす人の姿が主題となっており、
登山の域を超えた作家となる端緒となった作品です。
狩猟をはじめ、山での暮らしが注目される今、本書は新たな価値を帯びています。
高桑信一 1949年、秋田県生まれ。電電公社からNTT勤務を経て02年退社。
「ろうまん山房」を設立してフリーランスに。主に取材カメラマン、ライター、渓流ガイドとして活動する。著書に「一期一会の渓」「山の仕事、山の暮らし」「希望の里暮らし」(つり人社)「道なき渓への招待」「古道巡礼」(東京新聞出版局)「渓をわたる風」(平凡社)「森と水の恵み」(編著・みすず書房)などがある。
内容
1只見のゼンマイ取り
2南会津の峠の茶屋
3川内の山中、たったひとりの町内会長
4檜枝岐の山椒魚採り
5足尾・奈良のシカ撃ち
6只見奥山、夫婦径
7奥利根の山守り
8会津奥山の蜂飼い
9仙人池ヒュッテの女主人
10檜枝岐の雪が極めたワカン作り
11越後山中に白炭を焼く暮らし
12谷川岳・遭難救助に捧げた半生
13尾瀬・冬物語
14森のひとの、夢を育むヒメサユリの花
15岩手・浄法寺町の漆掻き
16朝日・飯豊の山々とともに生きる
17西上州、猟ひと筋の人生
18さすらいの果てに黒部に環る
19秩父の天然水に魅せられた半生
著者より
滅びつつも、逞しく生きる山びとの譜
「山の仕事、山の暮らし」は、「渓流」という雑誌に十年間連載されたものをまとめました。「渓流」は年に二冊の発行ですので、二十人になるはずですが、それが十九人で終わってしまったのは、それだけ山に糧を求めて生きているひとが少なくなったからです。
つまりこの本は、滅びゆく山びとたちを綴った本なのです。
けれどそこには悲しみがありません。晴朗とした日本の山河と、山に生きるひとびとの、おおらかな生き様があるばかりです。
446ページという厚い本になってしまったのは、多くの写真を使ったからです。全体の半分近くをモノクロの写真が占めていますので、文だけではなく、目でも楽しんで戴けると思います。多くの方々に読んでいただけたらうれしいことです。