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東京では珍しかったクマゼミの声を、最近よく聞くようになった。虫好きは喜ぶが、ことはそう単純ではない。気温で季節を数える虫たちが、温暖化で早く成長する。しかし日の長さで春を知る鳥たちは、子育て時期を変えられない。餌が少なくて親鳥は大ピンチ。ひたひたと迫る温暖化の波に、生き物たちはどういう影響を蒙っているのか?自然を見つめる優しい目から生れた人気エッセイ。
目次
動物たちの自意識
秋の落葉とカブトムシ
チビシデムシ
松枯れの虫と性フェロモン
春の思い
ある生物画家
常識と当惑
セミたちと温暖化
夕焼け小焼けの赤とんぼ
人は実物が見えるか?〔ほか〕
日高敏隆
1930‐2009。東京生れ。東京大学理学部動物学科卒業。東京農工大学教授、京都大学教授、滋賀県立大学学長、総合地球環境学研究所所長などを歴任。京都大学名誉教授。動物行動学をいち早く日本に紹介し、日本動物行動学会を設立、初代会長。2001(平成13)年『春の数えかた』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。