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「使わなかった!」と意識したとき、初めて存在するもうひとつの人生。あのとき、別の決断を下していたら――。去りゆく女性を引き止めることができなかった初老の男、肉親以上に愛情を注いだ弟子に裏切られてしまう中年女性…。透徹した眼差しで作品の本質をつき、そこから浮かび上がる人生の機微を抑制の利いた筆致で描く全三十編の映画評。
目次
世界は「使われなかった人生」であふれてる
出発するための裏切り
薄暮の虚無
にもかかわらず、よし
飛び立つ鳩を見送って
天使が砂漠に舞い降りた
焼き払え!
最後まで降りられない
官能的にしてイノセント
不可視の街で〔ほか〕
沢木耕太郎
1947年、東京都生まれ。70年に横浜国立大学経済学部卒業。若きテロリストと老政治家の、その一瞬までのシーンを積み重ねることで、浅沼稲次郎刺殺事件を描ききった『テロルの決算』で79年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
『一瞬の夏』(81年新田次郎文学賞)、『凍』(2005年、講談社ノンフィクション賞)、『キャパの十字架』(13年、司馬遼太郎賞)など常に方法論を模索しつつノンフィクションに新しい地平を開いてきた。
2003年、菊池寛賞を受賞。