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沖縄の石垣島に、息子と移住して三年あまり。「旅の人」と言うにはやや長く、「島の人」というにはまだ短い、そんな時間が流れた。
震災のときは仙台に住んでいた。すぐさま小学生の息子と二人で避難。空路を乗り継いで西へ向かい、沖縄、石垣島まで飛んだ。たまたま空席があっただけで、まさかそのまま住みついてしまうとは思ってもみなかった。虫は怖いし、魚は裁けない。そもそもアウトドアは大の苦手だった。「旅の人」と言うにはやや長く、「島の人」というには短い沖縄・石垣島の暮らし。
「地方暮らし」のブームを先取りした9年前のエッセイ集にボーナストラックを増補して復刊。「サラダ記念日」以前に儚く消えた「幻の50首」があった! そんな秘蔵エピソード「やや長い失恋の話」など。
俵万智
1987年の第1歌集《サラダ記念日》はベストセラー。歌集に《かぜのてのひら》《チョコレート革命》《プーさんの鼻》《オレがマリオ》《未来のサイズ》《アボカドの種》、評伝《牧水の恋》、エッセイ《青の国、うたの国》など。2022年、短歌の裾野を広げた功績から朝日賞を受賞。読売歌壇選者のほか、宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員もつとめる。