Detail
性と生殖への渇望が孤独と狂気を生む
13人の少女の妊娠騒動に揺れる高校と、夜の海で災難に遭う沿岸警備隊員を描く「総員」。
夜ごと鹿に変身してしまうことを夫にどう打ち明けたものか悩む妻は……「獣」。
爆弾魔の逮捕に執念を燃やし、爆弾ロボットを丹精こめて開発した男がたどる運命は……「愛の機械」。
母親という自身の立場になじめず、周囲のなにもかもが不確かで、暗闇になにかが潜んでいるのではないかと恐怖に駆られる女性を描く傑作「ラブストーリー」。
不妊の悩みを抱えるノーマが同じ名前を持つ“ダーティノーマ”と出会い、苛立ちを募らせていく「ストーリー・オブ」と、同じ主人公、ほぼ同じ場面から始まりながら、少しずつストーリーがいびつにずれていく連作短篇「ストーリー・オブ・オブ」。
暗く切実な感情が渦巻く出来事を、凝った構成、不気味な筆致で描き出す。一見落ち着いた日々のなか、満たされない思い、人生に対する葛藤や社会への諦念を抱く人々の孤独と狂気がリアルに迫る、ダークでシュールな十篇。
作家は米国出身、本短篇集はペン/フォークナー賞最終候補、NPR年間最優秀図書に選出され、高く評価されている。
[目次]
ストーリー・オブ
総員
獣
黄色
殺戮者コルテス
家が傾きはじめた
愛の機械
ラブストーリー
ウォンパム
ストーリー・オブ・オブ
謝辞
訳者あとがき
サマンサ・ハント Samantha Hunt
作家。2004年に自分は人魚かもしれないと信じる少女の物語The Seasでデビュー、全米図書協会の「35歳以下の5人」賞に選出された。「電気の魔術師」と呼ばれた天才発明家ニコラ・テスラの最後の日々を小説にした2作目のThe Invention of Everything Else(2008)でバード小説賞を受賞、オレンジ/女性小説賞の最終候補に選出され、注目を集める。そのほかの作品に、幽霊物語のMr. Splitfoot(2016)、死者との関係を探求したノンフィクションThe Unwritten Book(2022)がある。2017年発表の本書『ダーク・ダーク』は4作目にして初の短篇集で、2018年ペン/フォークナー賞最終候補、NPR年間最優秀図書に選出され高く評価されている。上記のほかにもグッゲンハイム奨学金を受けるなど受賞歴多数。短篇やエッセイを《ニューヨーカー》《ニューヨーク・マガジン》《マクスウィーニー》《アトランティック》《エスクワイア》《ヴィレッジ・ヴォイス》《ティン・ハウス》など多数の紙誌に寄稿している。現在、プラット・インスティテュートの創作科で教鞭を執っている。自身は六人兄弟の末っ子で、三人の子どもの母親としての顔のほかに、園芸家、養蜂家、精力的なスイマー、歌手、森林愛好家の顔も持つ。