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大人になりそこねた男と女は、
名作に導かれて、世にも真摯な三文小説を織り上げる。
いつか死ぬのは知っていた。けれど、死ぬまでは生きているのだ。
ささやかな日々の積み重ねが、こすり合わされて灯をともし、その人の生涯を照らす。
そして、照り返しで死を確認した時、満ち足りた気持で、生に飽きることが出来る。
私は、死を思いながら、死ぬまで、生きて行く。今わの際に、御馳走さま、とひと言、呟くために――。
山田 詠美
1959(昭和34)年、東京生れ。明治大学文学部中退。’85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。同作品は芥川賞候補にもなり、衝撃的なデビューを 飾る。’87年には『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞受賞。さらに、’89(平成元)年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、’91年 『トラッシュ』で女流文学賞、’96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、’05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞を 受賞する