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第117回芥川賞受賞作
公園にひとりで座っていると、あなたには何が見えますか?
スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった美女だった。噴水広場でカラフルな弁当を広げるOL、片足立ちの体操をする男、小さな気球を上げる老人・・・。ベンチの隣に座って彼女と言葉を交わし合ううち、それまでなんとなく見えていた景色が、にわかに切ないほどリアルに動きはじめる。
日比谷公園を舞台に、男と女の微妙な距離感を描いて、芥川賞を受賞した傑作小説。
ほかに東京で新生活をはじめた夫婦が、職場の先輩に振り回されてしまう「flowers」を収録。
吉田 修一
1968年9月14日、長崎県生まれ。法政大学経営学部卒。
1997年「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞。同作が第117回芥川賞候補となる。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で第127回芥川賞を立て続けに受賞し、文壇の話題をさらう。2007年『悪人』で大佛次郎賞と毎日出版文化賞を受賞した。
他に『東京湾景』『長崎乱楽坂』『静かな爆弾』『元職員』『横道世之介』など著書多数。