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生れもしつけもいい優雅なヒロイン倉越夫人節子の無垢な魂にとって、姦通とは異邦の珍しい宝石のようにしか感得されていなかったが……。作者は、精緻な技巧をこらした人工の美の世界に、聖女にも似た不貞の人妻を配し、姦通という背徳の銅貨を、魂のエレガンスという美徳の金貨へと、みごとに錬金してみせる。“よろめき"という流行語を生み、大きな話題をよんだ作品。
三島由紀夫
(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威。
1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。
主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。