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「私」は、ある夏の日、海辺ではじめて「先生」に出会う。
足繁く「先生」の家を訪れるようになった「私」には、「先生」の、すべてを諦らめたような生き方を解き明かしたいという気持が次第に強くなる・・・・・。
友を死に追いやった「罪の意識」によって、ついには人間不信に至る近代知識人の心の暗部を描いた傑作。
若い読者の理解を助けるため読みやすい活字で詳細な語注を付した。
夏目 漱石
(1867-1916)1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)に生れる。
帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表し大評判となる。
翌年には『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。