Detail
『聴耳頭巾』や『藁しべ長者』など、広く世に知られた話から『猿の尾はなぜ短い』や『海の水はなぜ鹹い』など、古くから語り伝えられた形をそのまま残したものまで。私たちを育んできた昔話のかずかずを、民俗学の先達が各地からあつめて美しい日本語で後世に残そうとした名著。
人間と動物たちとの騙しくらべや、長者ばなしのなかに、日本人の素朴な原型を見ることができるだろう。
著者の言葉
改めて著者が皆様に言うことの出来るのは、この中に載せてある昔話の大部分は、何れも日本国の隅々に於て、お互いに他の土地にも有るということを知らずに、ほんの少しずつのちがいを以て、各々その祖先から聴き伝え、記憶し伝えて居たものだったということであります。東北地方の話が此本には多いけれども、あちらにだけあって他にはないというものが、もう今日ではほとんど一つも無いという実状であります。今や安心して我々は、是を日本国の昔話だということが出来るのであります。……(本書「新訂版の始めに」より)
柳田国男(1875-1962)
兵庫県生れ。東京帝大法科卒。農商務省に入り、法制局参事官、貴族院書記官長を歴任。のち朝日新聞社に入り、国際連盟委任統治委員も務める。その間、1909(明治42)年に『後狩詞記』を刊行、1913(大正2)年には雑誌「郷土研究」を創刊、1935(昭和10)年には民間伝承の会(のちの日本民俗学会)を創始して、日本民俗学の確立と研究の普及に努めた。1951年文化勲章受章。『遠野物語』をはじめとした膨大な著作は『定本柳田国男集』全36巻に収められている。