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酒鬼薔薇聖斗、和歌山カレー事件、オウム真理教、新潟少女監禁事件、自殺者の増加、引きこもり―日本人の生活は豊かに、快適になったが、“心”はその変化に対応できず、多くの問題が生じてしまった。効率を追い、結論のみを急ぐ現代社会は、育児や教育には不向きだ。欲望を満たしても幸せにはなれない。ではどうすればいいのか。“心”の専門家から、困難な時代を生きる私たちへの提言。
目次
バブル化した教育―知識偏重では崩壊を招く
オヤジ狩りとオヤジ探し―新しい強さを創造しなければ
異なる性を生きること―自然に反して幸福を得る自由
完全信仰が生む不完全―O157に対する「不安」とは
「葬儀文化」を見つめるとき―なぜ「寅さん」は死を隠したのか
「いじめの根絶」論を省みる―子どもと楽しく過ごすことこそ
自殺予告という「表現」―関係を断った場所からのメッセージ
汚職を防ぐ「制度」―倫理よりも「ほんね」前提に
「二者択一」からの脱却―大使公邸占拠事件のペルーに学ぶ
日本的民主主義の「責任感」―反面教師としての小松市長〔ほか〕
河合隼雄
(1928-2007)兵庫県生れ。京大理学部卒。京大教授。
日本のユング派心理学の第一人者であり、臨床心理学者。文化功労者。文化庁長官を務める。独自の視点から日本の文化や社会、日本人の精神構造を考察し続け、物語世界にも造詣が深かった。著書は『昔話と日本人の心』(大佛次郎賞)『明恵 夢を生きる』(新潮学芸賞)『こころの処方箋』『猫だましい』『大人の友情』『心の扉を開く』『縦糸横糸』『泣き虫ハァちゃん』など多数。