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いまの日本で、谷川俊太郎にならんで多くの読者の心を動かす詩人長田弘による、三年ぶりの新詩集。前作『死者の贈り物』は、親しかった場所や人や書物にささげられていた。21篇を収めるこんどの詩集ではもっと自由に、私たちをとりかこむ自然や世界を歌っていてみごとである。
「物語の家族のように/母のように一本の木は/父のようにもう一本の木は/子どもたちのように小さな木は/どこかに未来を探しているかのように/遠くを見はるかして/凛とした空気のなかに/みじろぎもせず立っていた。/私たちはすっかり忘れているのだ。/むかし、私たちは木だったのだ。」(「むかし、私たちは」より)
目次
I
世界の最初の一日
森のなかの出来事
遠くからの声
森をでて、どこへ
むかし、私たちは
空と土のあいだで
樹の伝記
草が語ったこと
海辺にて
立ちつくす
II
春のはじまる日
地球という星の上で
緑の子ども
あらしの海
For The Good Times
秋、洛北で
メメント・モリ
カタカナの練習
見晴らしのいい場所
nothing
私たちは一人ではない
長田弘
おさだ・ひろし
詩人。1939年福島市に生まれる。1963年早稲田大学第一文学部卒業。1971-72年北米アイオワ大学国際創作プログラム客員詩人。毎日出版文化賞(82)桑原武夫学芸賞(98)講談社出版文化賞(2000)詩歌文学館賞(09)三好達治賞(10)毎日芸術賞(14)などを受賞。2015年5月3日死去。
詩集『われら新鮮な旅人』(1965、definitive edition、みすず書房、2011)『メランコリックな怪物』(73/79)『言葉殺人事件』(77)(以上、現代詩文庫、思潮社)『深呼吸の必要』(84)『食卓一期一会』(87)(以上、晶文社)『世界は一冊の本』(94、definitive edition、みすず書房、2010)『黙されたことば』(みすず書房、97)『記憶のつくり方』(晶文社、98、朝日文庫、2012)『一日の終わりの詩集』(みすず書房、 2000) 『長田弘詩集』(自選、ハルキ文庫、03)『死者の贈り物』(みすず書房、03)『人はかつて樹だった』(みすず書房、06)『幸いなるかな本を読む人』(毎日新聞社、08)『世界はうつくしいと』(みすず書房、09)『詩ふたつ』(詩画集、画クリムト、クレヨンハウス、10)『詩の樹の下で』(みすず書房、11)『奇跡—ミラクル—』(みすず書房、13)『長田弘全詩集』(みすず書房、15)『最後の詩集』(みすず書房、15)。
エッセー『詩は友人を数える方法』(講談社文芸文庫、93)『定本 私の二十世紀書店』(99)『アメリカの61の風景』(04)『知恵の悲しみの時代』(06)(以上、みすず書房)『本を愛しなさい』(みすず書房、07)『読むことは旅をすること——私の20世紀読書紀行』(平凡社、08)『アメリカの心の歌』(1996、expanded edition、みすず書房、12)『なつかしい時間』(岩波新書、13)『本に語らせよ』(幻戯書房、15)『ことばの果実』(潮出版社、15)『幼年の色、人生の色』(みすず書房、16)など。
没後5年、遺された断章群と散文詩5篇を編んだ『誰も気づかなかった』(みすず書房、20)刊行。