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心身華麗な26歳の人妻窈子は、一人娘の久美子を残して離婚に踏みきった。沼津の別荘に住まううち、出版社に勤める兄のすすめで美術書の執筆にやってきた織部と出逢い、運命的な恋をおぼえる。妻を亡くした織部もまた、新子の聡明な優しさに惹かれ、二人の愛は古都奈良の推びの中に燃え上がった。直後、新子を襲う残酷な運命......。純粋で熾烈な愛
の極致を冴々と描く、哀切のロマン。
立原正秋(1926-1980)
1926(大正15)年、朝鮮慶尚北道安東郡生れ。幼くして父を失い、1937(昭和12)年、横須賀の母の再婚先に移る。早稲田大学専門部に入学し、文学部国文科に学ぶが中途退学。
「薪能」「剣ヶ崎」で芥川賞候補となり、1966年、「白い罌粟」で直木賞を受賞。
凛とした精神性と日本的美意識に裏打ちされた多くの作品を生み、1980年、食道癌により死去。主な小説は『冬の旅』『舞いの家』『残りの雪』『夢は枯野を』『冬のかたみに』『帰路』等。