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取材先のウィーンのオペラハウスで、著者はいかめしい顔の係員にまくしたてる。「天井桟敷でも客は客やぞ。天井桟敷の隅で、汚い服を着てるやつのほうが、ボックス席の金持連中よりも、はるかに深い心でオペラを観るかもしれんやないか」
大阪弁「必殺日本語突き」に、金ボタンの制服を着た係員もすごすごと退散する・・・.・。
別れの悲しみは胸に仕舞い、素晴しい人々との出会い、出会い、出会い。
綴られた、ドナウ河の美しき情景に展開する生の歓喜と悲しみ、それはもう、ファンタスティック!
ヨーロッパ七カ国、そして中国を巡る笑いと涙に充ちた名紀行文。
宮本 輝
1947(昭和22)年、兵庫県神戸市生れ。追手門学院大学文学部卒業。
広告代理店勤務等を経て、1977年「泥の河」で太宰治賞を、翌年「螢川」で芥川賞を受賞。その後、結核のため二年ほどの療養生活を送るが、回復後、旺盛な執筆活動をすすめる。『道頓堀川』『錦繍』『青が散る』『流転の海』『優駿』(吉川英治文学賞)『約束の冬』『にぎやかな天地』『骸骨ビルの庭』等著書多数。