Detail
上
夫を捨てて、突如出奔した母・絹子。「ドナウ河に沿って旅をしたい」という母からの手紙を受け取った麻沙子は、かつて五年の歳月を過ごした西ドイツへと飛ぶ。その思い出の地で、彼女は母が若い男と一緒であることを知った。再会したドイツの青年・シギィと共に、麻沙子は二人を追うのだが…。東西ヨーロッパを横切るドナウの流れに沿って、母と娘それぞれの愛と再生の旅が始まる。
下
絹子は娘・麻沙子の説得にも応じず、ドナウの終点、黒海まで行くと言い張る。絹子の若い愛人・長瀬の旅の目的に不安を感じた麻沙子とシギィは、二人に同行することにした。東西3000キロ、七ヶ国にまたがるドナウの流れに沿って二組の旅は続く。様々な人たちとの出逢い、そして別れ―。母と娘それぞれの、年齢を超えた愛と、国籍を超えた愛を、繊細な筆致で描き上げた人生のロマン。
宮本輝
1947(昭和22)年、兵庫県神戸市生れ。追手門学院大学文学部卒業。広告代理店勤務等を経て、’77年「泥の河」で太宰治賞を、翌年「螢川」で芥川賞を受賞。その後、結核のため二年ほどの療養生活を送るが、回復後、旺盛な執筆活動をすすめる。『優駿』(吉川英治文学賞)『約束の冬』(芸術選奨文部科学大臣賞)『骸骨ビルの庭』(司馬遼太郎賞)等著書多数。2010年、紫綬褒章受章