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堀さんは人生を問いつづける
評論家 森本哲郎
堀さんは文章の達人である。私は文章の書き方を堀さんから教えられたといってもいい。
もう二十年以上も前になるが、堀さんは一年余にわたって朝日新聞の読書欄に「現代に生きる古典」というコラムを連載した。当時、私は朝日の学芸部の記者だったが、毎週受けとって読むその原稿におどろかぬことはなかった。東西の古典が四百字の原稿用紙わずか四枚半のなかに鮮やかに復元され、それがいかに現代に生きているか、独自な視点から説かれていたからだ。「一回、一回、薄氷を踏む思いで書いた」と堀さんはいっているが、それをまとめた書物は、いまもなお私の座右にある。
とうぜん、堀さんは読書の達人である。私は書物の読み方も堀さんから教わった。問題を持ち、共鳴し、味わい、そして考える、という読書の精神を。問題を持つということは、なぜ?と問うことだ。堀さんは人生を問いつづけ、本書でも問いつづけている。人はなぜ老いるのか、年齢をとるのは、どういうことなのか。なぜ?
問う人ーーこれが堀さんの何よりの代名詞だと私は思う。
<著者略歴>一九〇二年、金沢市に生まる。
東大哲学科卒業。五十歳より東洋大学で教える。五年前、学長で退職。主な著書に「新恋愛論」「現代に生きる古典」「論語は生きている」、訳書にラッセル「幸福論』がある