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ゲーテ自身の絶望的な恋の体験を作品化した書簡体小説で、ウェルテルの名が、恋する純情多感な青年の代名詞となっている古典的名作である。許婚者のいる美貌の女性ロッテを恋したウェルテルは、遂げられぬ恋であることを知って苦悩の果てに自殺する……。
多くの人々が通過する青春の危機を心理的に深く追究し、人間の生き方そのものを描いた点で時代の制約をこえる普遍性をもつ。
本文より
不幸な男よ、お前はばかではないのか。われとわが身を欺いているのではないか。この狂気のような果てしのない情熱は何だというのだ。ぼくの祈りは彼女以外の何ものにも向けられていない。ぼくの想像力には彼女以外の誰も姿を現わさぬ。周囲のいっさいも、ただ彼女との関係でだけ意味を持ってくる。実際それがぼくに数々の幸福な時間を与えてくれるのだ。……
ゲーテ(1749-1832)
ドイツ、フランクフルトに生れる。ライプツィヒ大学で法律を学び、弁護士を開業。1774年、ドイツ帝国最高法院で実務を見習った時の恋愛を材にとった『若きウェルテルの悩み』を発表し一躍その文名をとどろかせた。その後も精力的に詩集、戯曲、小説を発表。招聘されたワイマル公国では大公に信を得て大臣から内務長官、そして、宮廷劇場総監督として活躍した。今なお世界中の芸術家、思想家に影響を与え続ける不朽の名作『ファウスト』を1831年、着想から実に60年の歳月を費やして完成させた。翌1832年永眠。享年82。