Detail
このアンバランスな世界で見つけた
私だけの孤独————
箱に閉じ込められてしまったふたりの男、朝起きたら種に覆われていた女、
テスの手は鉤爪に変わり、フランシスは魚しか食べないことにした……。
AMからPMへと、時間ごとにゆるやかに奇妙にずれていく120の物語。
ロナルド・スケニック/アメリカン・ブックレビュー・イノべイティブ・フィクション賞、ヤングライオンズフィクション賞受賞、ペン/フォークナー賞、シャーリー・ジャクスン賞ファイナリスト!
アメリカでいまもっとも注目を浴びる新たな才能、鮮烈デビュー作!
★松田青子「訳者あとがき」より
さみしい、と堂々と口に出すことのできる人は、今この世界にどれだけいるのだろうか。人間関係や恋愛関係を築くことの難しさや不確かさ、孤独や絶望がデフォルトであることを知ってしまった現代社会で、さみしい、悲しい、つらい、と叫んでも、物語性は生まれない。誰も真面目に耳を傾けてくれない。それはもう当たり前のことだからだ。
けれど、じゃあ自分の胸の中にある確かなこの気持ちをどうしたらいいのという時に、ある瞬間、人々は無意識に、“普通”から少しずれた、変なことをしたり、口に出したりしてしまうことがある。側から見ると、脈略や意図が不明だったとしても、それはその人にとっては、人生に抗おうとする、決死の瞬間だ。
そしてそのギリギリの小さな瞬間を、アメリア・グレイは見逃さない。120の掌編からなる本作『AM/PM』は、日常に存在する、そんな奇跡の瞬間が120収められている。
著者
アメリア・グレイ
1982年アリゾナ州生まれ。2009年に本書でデビュー。2015年に発表した短編集Gutshotがヤングライオン・フィクション賞受賞、シャーリー・ジャクスン賞短編集部門最終候補となった他、受賞多数。