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本書は、東チェロキーの山中における著者と祖父母との生活をつづった自伝的な回想録である。1930年代、経済大恐慌下の一生活記録として貴重だが、単にそれだけのものにとどまらず、どんな時代のどんな人にも共感を与えうる人間的な記録に高められている。万人の精神に語りかけ、魂の最深部に訴えかける力を持っている。
五歳のとき両親を亡くした少年は、山に暮らすインディアンの祖父母に引き取られ、「リトル・トリー」と名づけられる。少年は、ガラガラヘビに襲われたり、密造酒づくりを手伝って白人に追いかけられたりしながらも、祖父母から、自然と共に生きるための知恵や「霊の心」の大切さを学んでいく。ところが、心ない白人たちのせいで彼は孤児院に送られることに……。少年の目を通して描かれる、優しさと痛みとユーモアにあふれたこの物語は、人間にとって「本当に大切なものは何か」を思い出させてくれる。
≪久方ぶりの感動だった。それも心の底の底からの。山から噴き出す清烈な湧水に身体から心まで洗われた気がした。読み終ってすぐさま電話をとり出版社に電話して二十部注文した。愛する人に配りたかったからだ≫ ――倉本 聰氏の推薦文
≪『リトル・トリー』は、いつの時代にも新しい世代の人たちによってくりかえし発見され、読みつがれてゆくべき『ハックルベリー・フィンの冒険』などと肩を並べうるまれな本である。全篇美しく滋味に富んでおり、読者はとてつもないおかしさに笑わせられるかと思うと、痛切な感情にはげしく胸を揺すぶられるにちがいない。……万人の精神に語りかけ、魂の最深部に訴えかける力を持っているのである≫ ――元・南イリノイ大学法学部長/オクラホマ大学アメリカ・インディアン法律政治研究センター所長 レナード・ストリックランド(チェロキー・インディアン)
≪『リトル・トリー』はチェロキーの編む籠のようだ。自然が恵んでくれた材料で編まれ、デザインはシンプルで力強く、たくさんのものを運べる。この本は「小さな古典」と呼ばれてきたが、私の感じではそれ以上のものだ。……環境、家族の絆、人種差別、人間関係……この本はそのすべての問題について深い関心を寄せている。この本は今の世に求められている≫ ――『それでもあなたの道を行け』の編者/作家/語り部 ジョセフ・ブルチャック(アベナキ・インディアン)
◆第1回ABBY賞受賞作品「米国の書店人が売ることに最も喜びを感じた本」
◆アメリカで映画化――リチャード・フリーデンバーグ脚本/監督
◆厚生省中央児童福祉審議会推薦文化財